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晩秋の山は「お湯」を持っていく|保温ボトルの容量の決め方、「6時間で77℃」の読み方、水分量の目安と入れてはいけないもの

写真:Raita Futo, Wikimedia Commons(CC BY 2.0)/紅葉の栗駒山

晩秋の山は「お湯」を持っていく|保温ボトルの容量の決め方、「6時間で77℃」の読み方、水分量の目安と入れてはいけないもの

10月中旬から下旬の山頂は、晴れていても休憩中に体が冷えやすい季節です。持っていく水の量を「体重×行動時間×5」の式で出し、その一部を保温ボトルのお湯に置き換える考え方、山専用ボトルの「保温効力77℃以上」がどんな条件の数字か、500ml・750ml・900mlの選び方、アルファ米やカップスープへの使い方、ボトルに入れてはいけない飲み物を、メーカーの公式情報をもとに整理します。

目次

  1. 結論|10月下旬からは「水の一部をお湯に置き換える」
  2. まず全体の量を出す|「体重×行動時間×5」の式
  3. 涼しい季節でも水分は出ていく
  4. 初心者は「体重の1%」までの脱水を許容範囲に
  5. 「保温効力77℃以上」はどんな条件の数字か
  6. 山専用ボトルのカタログ値を比べる
  7. 表示の条件は「室温20℃・縦置き・6時間」
  8. 出発前の「予熱」で差がつく
  9. 容量の決め方|3つの質問で考える
  10. お湯は「飲む」以外にも使える
  11. アルファ米は「熱湯で15分」が基準
  12. スープやココアは「粉を持っていき、山で溶かす」
  13. 入れてはいけないもの・気をつけたいもの
  14. 山頂で慌てないための使い方
  15. 参考リンク

結論|10月下旬からは「水の一部をお湯に置き換える」

10月中旬を過ぎると、麓は紅葉の見頃でも、山頂や稜線では休憩中に一気に体が冷える日が増えてきます。長野県の「秋山情報」も、秋は日が短く冷え込むとして、防寒着やヘッドライト、食料などを持つよう呼びかけています(長野県 令和8年 秋山情報)。

この時期に持ち物を1つ見直すなら、飲み物の一部を保温ボトルのお湯や温かいお茶にするのがおすすめです。考え方は次の3ステップです。

  1. 全体の量:その日の行動時間と体重から、持っていく水の量を出す
  2. お湯の量:そのうち300〜900mlを、休憩や食事で使う分としてお湯にする
  3. ボトルの扱い:予熱してから満たす、塩分の多いスープや乳飲料は入れない

温かい飲み物は体の芯まで温めてくれるわけではありませんが、冷えた水よりも口にしやすく、休憩のたびに手や体を温めるきっかけになります。寒い日に「冷たくて飲む気がしない」ことで水分が足りなくなるのを防ぐ意味でも、晩秋の山では心強い装備です。

赤や黄色に紅葉した低木の間を登山道が続き、その先に草紅葉に覆われた栗駒山の山頂部が見える
紅葉の栗駒山。見頃の時期でも、稜線の休憩では風で体が冷えやすくなります。写真:Raita Futo, Wikimedia Commons(CC BY 2.0)

まず全体の量を出す|「体重×行動時間×5」の式

涼しい季節でも水分は出ていく

秋は汗をかいている実感が少ないため、水を少なめにしがちです。しかし、登山の運動生理学を研究してきた山本正嘉さん(鹿屋体育大学名誉教授)は、行動中の脱水量のおおよその値を、次の式で求められるとしています(講談社ブルーバックス 山本正嘉「ザックに入れる食べ物の量が瞬時にわかる計算式」)。

  • 脱水量(ml)=体重(kg)×行動時間(h)×5
  • 体重には荷物の重さを含めず、行動時間は標準コースタイム(小休止込み)で考える
  • 歩きやすい道、軽装、春や秋のように上りで少し汗をかく程度の条件での値で、条件がよいときの「下限値」

つまり、この式は秋の山を想定した数字です。急ぎ足や重い荷物、ぬかるみや雪道では、これより多くなると考えてください。

初心者は「体重の1%」までの脱水を許容範囲に

山本さんは、出ていった水分をすべて行動中に補う必要はなく、登山者のレベルごとに許容できる脱水の範囲を示しています。初心者や体力に自信のない人は体重の1%までが目安で、行動中の補給量は「体重×行動時間×5−体重×10」になります。体重60kgの人が6時間歩く場合は、1,800ml−600ml=1,200mlです(ミツカン水の文化センター 機関誌『水の文化』74号 山本正嘉さんインタビュー(PDF))。

体重60kgの人が4時間、6時間、8時間歩く場合の、失われる水分量と持っていく水の量、そのうちお湯にする量を横棒で示した図
体重60kgの人の例。灰色が失われる水分、緑とオレンジが持っていく水で、オレンジの部分を保温ボトルのお湯や温かいお茶にします。作成:山日記
体重60kgの人の行動時間脱水量の目安行動中の補給の目安うちお湯にする量の目安
4時間(低山の日帰り)約1,200ml約600ml以上300〜500ml
6時間(標準的な日帰り)約1,800ml約1,200ml以上500ml前後
8時間(長い行程・高い山)約2,400ml約1,800ml以上750〜900ml

補給の目安は、山本さんの式から計算した最低限の量です。予備として少し多めに持ち、余った分は下山後に飲むくらいがちょうどよいでしょう。お湯の量は、休憩の回数や食事に使うかどうかで変わるので、次の章で詳しく見ていきます。

「保温効力77℃以上」はどんな条件の数字か

山専用ボトルのカタログ値を比べる

山で使う保温ボトルの代表例が、サーモスの「山専用ボトル」です。公式サイトの仕様表を並べると、次のようになります。

品番実容量保温効力(6時間)本体重量向いている使い方
FFX-5020.5L77℃以上約0.28kg1人の日帰り。温かい飲み物を2〜3杯
FFX-7520.75L78℃以上約0.36kg1人で飲み物+カップスープなど
FFX-9020.9L80℃以上約0.39kg2人で分ける、アルファ米など食事にも使う

出典:サーモス FFX-502、FFX-752、FFX-902(いずれも公式の仕様表)

容量が大きいほど保温効力が少し高いのは、中のお湯の量が多いほど冷めにくいためです。一方で、0.5Lと0.9Lの重さの差は約110gです。水を同じ量持つなら、ボトルを大きくする重さの増え方はそれほど大きくありません。

表示の条件は「室温20℃・縦置き・6時間」

サーモスの仕様表では、保温効力を室温20℃±2℃で、95℃±1℃の熱湯を中せん下端まで満たし、中せんとコップを付けて縦置きにして6時間置いたときの湯温と定義しています。

ここから、山で使うときに押さえておきたいことが3つ分かります。

  • 外が寒いほど冷めやすい:表示は室温20℃での値です。気温が0℃前後の稜線では、条件はこれより厳しくなります
  • 開け閉めするたびに冷める:表示は一度も開けない状態での値です。休憩のたびに注ぐと、その分だけ熱が逃げます
  • 満たさないと冷めやすい:「実容量」は中せん下端までの量です。半分しか入れないと、お湯の量が少ない分、冷めるのも早くなります
二重の壁の間に真空の空間を設けたボトルの断面図と外観図が描かれた、1907年の米国特許の図面
真空断熱ボトルの基本の構造を示した1907年の特許図面。内びんと外びんの二重の壁の間を真空にして、熱が伝わりにくくしています。現在のステンレス製ボトルも、この「二重壁+真空」の考え方は同じです。図:Reinhold Burger, U.S. Patent 872,795(1907), Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

出発前の「予熱」で差がつく

象印マホービンの取扱説明書では、あらかじめ本体に熱湯を入れて1分程度予熱しておくと、保温に効果的としています(象印マホービン ステンレスマグ 取扱説明書(PDF))。冷えたボトルにそのままお湯を入れると、最初にボトル自体を温めるのにお湯の熱が使われてしまうためです。

前日の夜に準備するのではなく、出発の直前に次の順で入れるのがおすすめです。

  1. 沸かしたお湯を少し入れ、栓をして1分ほど置いてから捨てる(予熱)
  2. 改めて沸かしたてのお湯を、中せんの下端まで満たす
  3. 栓とコップをしっかり閉め、ザックの中に縦向きに入れる

容量の決め方|3つの質問で考える

ボトルを新しく買うときも、手持ちのボトルの中から選ぶときも、次の3つの質問で考えると迷いにくくなります。

行動時間が6時間を超えるか、高い稜線や風の強い場所で休むか、お湯で食事を作るか2人以上で分けるか、の3つの質問の点数で、500ml、500から750ml、750から900mlの容量を選ぶ図
「はい」の数で容量を選ぶ目安。0点なら500ml、1点なら500〜750ml、2〜3点なら750〜900mlが目安です。作成:山日記

判断のポイントを補足します。

  • Q1 行動時間:時間が長いほど、山頂や下りの休憩でお湯を使う回数が増えます。また、出発から時間がたつほど湯温は下がるので、量の多いボトルのほうが温かさを保ちやすくなります
  • Q2 標高と風:山頂の気温と風の見積もり方は、初冠雪のニュースが出たら|晩秋の山の天気の読み方で、標高と風速ごとの体感温度の図を使って解説しています。体感温度が0℃を下回りそうな日は、温かい飲み物の出番が増えます
  • Q3 食事と人数:お湯を食事に使う日や、家族・友人と分ける日は、飲む分とは別に量を確保します
晴れた空の下、樹木に雪や霧氷が付いて白くなった西吾妻山の山頂部と、手前の雪の残る岩場
11月中旬の西吾妻山。晴れていても樹木には霧氷が付き、山頂部は冬の入り口です(2015年11月13日)。写真:Koda6029, Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

お湯は「飲む」以外にも使える

アルファ米は「熱湯で15分」が基準

保温ボトルのお湯は、食事にも使えます。たとえば尾西食品のアルファ米「白飯」は、必要な水量が160mlで、出来上がりの目安は熱湯で15分、水(15℃)で60分です(尾西食品 製品規格、尾西食品 アルファ米の作り方)。

山頂で温かいごはんを食べたい場合は、次の点に気をつけましょう。

  • 保温ボトルのお湯は、沸かしたてより温度が下がっています。表示の時間より少し長めに待つつもりで、早めに準備を始めます
  • 160mlは、500mlボトルのおよそ3分の1にあたります。飲む分が足りなくならないよう、食事に使う日は容量を一段大きくします
  • 待っている間は袋が冷えないよう、風の当たらない場所に置くか、ザックの陰に入れておきます

スープやココアは「粉を持っていき、山で溶かす」

カップスープやココア、インスタントの味噌汁などは、お湯だけをボトルに入れ、粉末は山で溶かすのが基本です。理由は次の章の「入れてはいけないもの」にあります。必要なお湯の量は商品ごとに違うので、パッケージの表示を確認して、何杯分を持っていくかを決めておきましょう。

ステンレス製の保温ボトルと、外したコップ兼用のふたが木の台の上に置かれている
コップ付きのステンレス製保温ボトル。ふたをコップとして使えるタイプは、手袋をしたままでも注ぎやすく、山頂で何人かで分けるときにも便利です。写真:Robert Orzanna, Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

入れてはいけないもの・気をつけたいもの

ステンレス製の保温ボトルには、入れると危険なもの、ボトルを傷めるものがあります。象印マホービンのよくあるご質問と取扱説明書では、次のものを「絶対に入れない」としています。

入れないもの理由(メーカーの説明)山での代わりの方法
ドライアイス・炭酸飲料中の圧力が上がり、栓が開かなくなったり、飲み物が噴き出したり、部品が破損して飛び散ったりすることがある炭酸飲料は専用に設計されたボトルか、普通のペットボトルで持つ
牛乳・乳飲料・果汁・レモン水腐敗しやすく、長時間置くとガスが発生して中の圧力が上がるミルクティーやココアは、粉末を持っていき山でお湯に溶かす
みそ汁・スープ・昆布茶塩分が多く、内側がさびたり、保温性能が下がったりする原因になるお湯だけを入れ、粉末スープは山でカップに溶かす
果肉・お茶の葉詰まりや漏れなど、故障の原因になるお茶はティーバッグで作ってから入れるか、山でカップに入れる

出典:象印マホービン よくあるご質問「ステンレスボトルや水筒に、入れてはいけない飲み物はありますか?」、象印マホービン ステンレスマグ 取扱説明書(PDF)

なお、サーモスはスポーツ飲料について、同社のステンレス製ボトルで使えるとしたうえで、温めたスポーツ飲料は入れないよう案内しています(サーモスオンラインショップ 保冷炭酸飲料ボトル FJK-750)。飲める物・飲めない物は製品ごとに違うので、手持ちのボトルの取扱説明書も必ず確認してください。

山頂で慌てないための使い方

温かい飲み物は、使い方しだいで便利にも危険にもなります。山の上で落ち着いて使えるよう、次の点を意識しておきましょう。

  • やけどに注意してゆっくり飲む:取扱説明書でも、熱い飲み物は急に傾けずにゆっくり飲むよう注意しています。直飲みタイプより、コップに注いで少し冷ましてから飲むほうが安心です
  • 注いだらすぐ栓を閉める:開けている時間が長いほど、残りのお湯が冷めていきます
  • 手袋をしたまま開け閉めできるか試す:寒い稜線では、手袋を外す時間を短くしたいものです。手袋の重ね方や防寒小物については秋山の低体温症の記事、凍った道で手を使う場面は凍結した登山道と軽アイゼンの記事も参考にしてください
  • 温かい飲み物は「防寒着の代わり」ではない:休憩に入ったら、まず上着を1枚着てから飲み物を出すのが順番です。重ね着の考え方は登山の服装(レイヤリング)ガイドにまとめています
  • エネルギーも一緒に:寒い日はエネルギーの消費も増えます。行動食の考え方はシャリバテの記事が参考になります

日没が早くなるこの時期は、山頂でゆっくりしすぎると下山が暗くなります。温かい飲み物で休憩を楽しむ時間も含めて、日没とヘッドライトの記事を参考に、下山時刻から逆算した計画を立てましょう。全体の持ち物は登山の持ち物チェックリストをベースに、晩秋は「保温ボトルのお湯」を加えておくと安心です。

この記事の写真に登場する山は、山日記の登山レポートでも紹介しています。いわかがみ平から周回した栗駒山の登山レポートと、天元台高原から往復した西吾妻山の登山レポートは、どちらも夏に歩いた記録ですが、コースの様子や登山口までの流れは秋の計画にも役立ちます。

参考リンク

関連する晩秋の記事:初冠雪と晩秋の山の天気/秋山の低体温症/凍結した登山道/日没とヘッドライト/施設が閉まる晩秋/落ち葉の登山道

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執筆・確認

山日記編集部

実際の山行記録や公的機関・自治体の最新情報をもとに、登山ルート・装備・安全対策をわかりやすく整理して発信しています。 登山道・交通・施設情報は変わるため、記事公開後も必要に応じて更新し、最新確認先も案内しています。

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